青く茂る芝生が「ポセイドン」にある小さな民族雑貨店から覗けた。 夏が来た。店長は売り時だからと気合を入れるがどうせ格段に安くならないなら多くの人間は寄り付かないだろう。 そんなことはどうでもいい、今日は珍しい客が来た。今日はこれだけでいい。 まず一人目。それは車椅子にのってやってきた。 「もう、せっかくのショッピングなのに調理道具なんかみてぇ」 「しょうがないじゃない。日本の包丁はとても切れ味がいいのよね」 車椅子に座る女は、それを押す赤毛で長身の女に不満げに文句を言うが、赤毛の女はまるで悪いとは思っていないようだ。 会話を聞くだけなら、その二人組に興味を持つわけがない。 俺には見えるから、ただただこちらへ向かうそれが可愛らしく思えて今すぐにでもギリギリと、ミチミチと肉のひしめく音が聞きたくなった。 車椅子の女の下半身に目をやる。毛布に包まれようが関係ない、俺の目はあらゆる生命を壁越しでも把握することが出来るから。 女は人魚だ。初めて見たが、俺の目に映る生命の光はそれを象っていたのだから間違いはないだろう。 魚を縛ったことはあるが、あれは脆すぎた。あれでは『残す』ことが出来ないから諦めていたが、そうか、魚の肉が千切れるか千切れないかの音を聞かせてくれるのか。 「わぁ可愛い。これどう?」 「あら、似合ってんじゃない。うーん…そうねぇ付きあわせちゃったし。」 「今こちらが当店の人気商品となっております。よろしければこちらもどうぞ。」 布で作られた髪留めを付けて赤毛に感想を尋ねる人魚に、いつもの様に従業員として形式の行動を起こす。 「いえ結構。他のもまわってまた後で来ましょ」 「えー」 …次は俺のやり方でここで支配下に置くつもりだったのだが。どうやら赤毛の女に勘付かれたようだ。 まぁいい、あんな姿は二度と忘れない。今度はあの赤毛を片付けてからだ。 そして二人目。それはたくさんの袋を抱えていた。 「まったく。こんなものしか買えないなんて、使えないわね」 「俺を破産させる気かよ。言っとくがこれで俺の何時間分の働きが吹っ飛んだと…おいもうやめてくれ!」 さっきのも興奮したが、今回のは興奮のあまり体が震えた。この店にあっさりと二人の「異常」が入ってきたのだ。 最初に入ってきたのは俺の目で見てハッキリと人間ではない女だった。女は店頭に置いてある羽のついたネックレスを首元に持っていく。 「ふぅん。どう?」 「どうってお前」「何よハッキリと言えないの?」「似合ってる」「それでいいのよ」 随分と言いなりになっている男は人間にもかかわらず、ある意味最も異質だった。 人間離れした生命力、驚異的な肉体。それは英雄の素質を裕に持っているはずだ。なのになんだこの哀れというまでの普通の人間と化した性格は。 いったい何がこの才能の塊を普通の人間まで貶めたのか。初めて人間として興味を持ったかもしれない。これは欲しい。 「今こちらが当店の人気商品となっております。よろしければこちらもどうぞ。」 「趣味じゃないわ。これにする。」「俺は買うって言ってない」「いいわよ自分で出すわ」「俺の財布だろそれ」 「ではカウンターまでどうぞ」「嘘だろ何食えってんだよ」 女がカウンターまで歩いてくる。幸い他の客はいないから、今度こそ一人ずつ仕留めたい。 女が財布に目を移す。今だ「あ”っ!!」…落ち着いた低い声から随分と素っ頓狂な声が出るものだ。 「何よ」「…家の鍵落とした」「はぁぁあ?公。アナタ私に恨みでもあるわけ?」「そんなんじゃねぇよ!とにかく探すぞ!」 またも逃げられた。今日は運がいいのか悪いのかわからないな。 しかしあの「コウ」と呼ばれた男、右目の光が薄かった。次に会ったときはそっちから攻めよう。 しかし一日でこんな収穫があるとは。成程これが聖板戦争か、これからずっとこんな一日が続くというのか。 …しかしそれだけか?何かを忘れている気がして窓の外を見た。あの芝生が俺の脳内に入り込んできた。そうだ思い出した。今日は俺の誕生日だ。 こんな青く茂ったこの夏の日に生まれたのだと、顔も覚えていない母が俺に伝えたのを思い出したのだ。 そうか、これは誕生日プレゼントか。ならば特にあの二人は頂かなければならない。 奴らが赤黒い絞め痕を残していくことを考えて、俺は初めてこの魔術を使った時の様な無邪気な表情で笑った。 性格 非常に感情の起伏が少なく。常に淡々とした喋り方をするが、内面は常に自分の存在を残すことを考えているエゴイストである。 方針(聖板戦争での立ち回り方) 誕生日プレゼント(ローレライと公)を手に入れようと探し回る。 他に魅力的な人外、超人、英霊を見つけたらそれも縛ろうと積極的に行動する。 戦闘スタイル(強み・弱点含む) 所有の舌付で相手を縛り相手をどんどん衰退化させるやり方が多い。基本攻撃といえるものはせず、縛る。ただそれだけ。双丸の魔術はサーヴァントにすら通じ、耐久がB以下の場合は問題なく痕をつけることが出来る。 対魔術スキル持ちに関してはA以下の場合にも同様である。 所有の舌付は一本の帯状のものであり、限界で10kmの長さまで出すことが出来るが、一度それが斬られると斬られた場所から先は効果がなくなるため、魔力の消費が激しくなる危険がある。 敏捷がB以下の相手なら有利に進められるほどのスピードで所有の舌付を操る。 戦闘時相性の悪い相手・良い相手 肉体の概念がない者とは非常に相性が悪い。強い魔力耐性を持っていると普段より多くの力を使うこととなり、体力が少なめな彼にとっては大変である。 相性が良いのはアサシンなど。気配を消したりするスキルを顕現の理で見抜くため。 性格的に相性の悪い相手・よい相手 いない。常に自分の事しか考えていない。 パートナーについてどう思っているか 折角呼んだのに大したものでなくて非常に不服である(双丸はキャスターがどのような偉人かは知らない)。 さっそく支配下に置いて、利用できるなら利用させようとしている。 キャッチフレーズ 「折れるか、折れないか…この瞬間の音も綺麗だな」 「もしその痕が付けられて、お前はそのように臨戦態勢になれるのか?その痕を隠して生きていくのか?どちらにせよお前は俺に支配された…俺を忘れない。お前は俺の一部となグハァ!!」(公に対して) 「人間は痕がつくが…人魚の足は痕が付きそうにないな。絞めて周りを焼いてしまうか」(ローレライに対して) 「人間はもう飽きた。でも、やらないとは言ってない。魔法使いは非常に綺麗な痕を残すんだ…絵の具を塗ったようにね」(アリゼに対して) 「神は信じていない。でも…目の前にあるものがもし本物のそれならば、俺は神話にも残るのか。」(エリスに対して) イラスト・小説などの二次創作使用の可否・・・など 可。使いたい人とかいんのこの変態。