「あまり妙な期待をされても困りますよ?
 僕はしがない街頭藝人だいどうげいにんですから」




■黄飛鴻/Wong Fei-hung
   ―――――――――ライオナイズドマスター


 清王朝末期の中国、広東における当時の武術のメッカ・佛山において神童と謳われた、稀代の武術家。
 近代中国においておそらく最も著名な英雄的拳法家である。

 たかだかティーンエイジに差し掛かるか否かという時期には既に生半な武術家では相手にならない程の武を修める、
 まさしく天才の名にふさわしい拳士であった。
 この天才はその天賦に加え数多の同業者に師事し技法を学ぶという勤勉さを併せ持ち、自身のベースである洪拳に
 それらの技を組み込むことで、本来近接特化型の拳法であった洪拳が現在の遠近対応型の拳法に様変わりしたという。

 諸外国との軋轢により中国に動乱の嵐が吹き荒れる中、民衆や軍隊に武芸を伝授し、国の治安維持に貢献したとして名高い彼だが、
 一方で大道芸をその生活の糧として営んでもおり、中でも舞獅(中国のシシマイ)に長けた彼は「獅王」の二つ名で呼ばれていた。
 (なお洪拳と舞獅は密接な関係があり、舞獅の動きには洪拳の套路「五形拳」が組み込まれているという。)

 生涯で何と4度も結婚を繰り返した彼は実に子沢山で、我が子達を養う為に、医院や道場を経営しつつも結構長いこと
 舞獅を続けていたらしい。そんな多くの子の中にも彼の弟子がいたりする。
 …その息子は心半ばにその生涯を終えることとなる。飛鴻が武芸の伝授により抗しようとした、西欧勢力がもたらした銃によって。

 諸外国との紛争によって多くの弟子達が命を落とす中、彼は道場に「幾千金を積まれようとも伝授はしかねる」との広告を掲げ、
 その武の門戸を閉ざす。その心中が如何なるものかは余人には推し量れない。

 動乱の中国。近代化の波が国を押し流さんとする時代に、身一つで抗う術を説き続けた黄飛鴻は、齢78でその生涯を終える。
 しかしながら、かの拳士の勇姿は数多の電影作品により幾度と蘇り、大衆の心に生き続けている。




■人物像


 一人称:僕
 二人称:貴方

 飄々として掴みどころのない、それでいてドライというか達観したような言動を取る男。
 その在り方はどこか仙人然としたものを思わせるが、一方で割りと俗っぽい。

 自称「大道芸人」(街頭藝人)。
 いわゆる“武”に対してはその精神性より実用性に重きを置いており、あくまで手段、商売道具と割り切っている。
 …もっと言うとこの「実用性」とはつまり「生活のたつきに成り得るか否か」という意味であり、「人を殺傷しうるか否か」ではない。
 これは正義や博愛の精神から生じるイズムではなく、単に彼が「人を殺傷しうる手段」としての“武”に見切りをつけているからである。
 (じゃあ「生活のたつき」に関しても微妙じゃね?という声が聞こえてきそうだが、残念なことに彼は“武”以外の生きる術を知らない。)

 恐ろしく気前の良い善人。
 頼まれたら断れない人。困ってる者を放って置けない人とも。
 縁談も断れずに4回も結婚する始末(一夫多妻ではなく、単に3回奥さんに先立たれたという話)。
 もっとも彼としては手当たり次第に助けようとする訳ではなく、不誠実な優柔不断行為はしないつもり。
 やるなら皆きちんと面倒を見るし、出来ないならビシャッと断る。
 ―他人から見ればキャパシティが大きすぎて、何でもやってくれる人だと思われがちだが。

 後世の自分の持ち上げ方というか異様な人気には「身に余る」と正直複雑な気分。


■戦闘スタイルと聖板戦争における方針


『方針・目的』

 そもそも聖板、願望器に対して明確な願いがない。「手に入ればまあ得ではあるな。どっちでもいいや」程度のもの。
 にもかかわらず召喚に応じたのは、単純に「お喚びが掛かったから」である。
 (前述の“頼まれたら断れない”、“困っている者を放って置けない”悪癖が出た模様。)

 よってよっぽど道理に合わない、道義に沿わない行為でない限りは気前良くマスターの指示に従うだろう。
 (そもそも助ける為に来たのだから助けなければ意味が分からない、とはアイドルの言。)
 マスター以外の困っている者に遭遇したら“一応”助けるか否か確認を得てから決める(結果はお察し。
 と言ってもマスター第一優先で考えているので、どうしても駄目と言われれば止めるし、マスターに害があるなら助けない)。
 
『戦闘時相性の良い相手・悪い相手』

 1対1の白兵戦を最も得意とする。
 相手にとっては中国武術を習得していない限りこちらの攻撃の実態がつかめず、下手をすると攻撃を受けていることにさえ気付けない。
 加えて宝具の開放によって空間を自由自在に踏み越えてくるため、生半可なことでは触ることさえ出来ないだろう。

 逆に言うと彼一人で対処できる人数・規模を超えた攻めには流石に打つ手がなく、防戦(というか逃げ)の一手となる。
 本当に個対個の白兵戦でしか実力を発揮できないサーヴァント。

 銃に対しては色々な意味でコンプレックス。なるだけ表には出さないが。

『性格的に相性の良い相手・悪い相手』

 彼の“人助け”の基準はその相手の善悪に限らず「困っている」事である。つまり理由があれば誰とでも協力するということである。
 ので平時においては都合のいい事この上ないのだろうが、件のようなバトルロイヤルにおいては、
 傍から見ると表面上は組みし易いようでも、その思惑が(実情がどうあれ)図りかねるきらいがある。


■マスターとの関係


 基本的には契約で結ばれるビジネス関係。
 とはいえ目下最優先の「頼まれた相手」「困っている人」であり、加えてマスターの状況はずいぶんと窮屈な状態であるように思われ、
 どうにか助けてやれないかと気を揉んでいる。


■台詞


 「メリットが無い?何言ってんですか、人助けは別腹でしょ。
  大体人助けと金儲けを同時にやろうってのがどだい無精な考えなんです」

 「申し訳ないが、僕は人が期待するようなイズムや哲学のようなものを“武”に対して持ち合わせてはいませんよ。
  そりゃ誇りぐらいはありますが、言ってしまえばそれは金細工師が自分の技術に対して持つような代物であって…」

 「強さが欲しいですか?
  なら銃把を握って、銃爪を弾きなさい。
  それが嫌なら銃後にでも立つが良い」


■イラスト、小説の二次創作使用


 ご自由にどうぞ。
 というか使っていただければ幸いです。