※サーヴァントの真名が書いてあるので注意 『 ひかえおろ〜。いえしげは、しょーぐんなのら。あいーん!』 詳細設定 企画エントリーシート+ ・人物  江戸幕府第九代将軍。八代将軍であるあの暴れん坊、徳川吉宗の長男として生まれる。父の吉宗が将軍職に就くと同じくして江戸城入り。   頑健な父とは正反対の虚弱体質の上、脳性麻痺と推測される障害により言語が不明瞭。そういった理由から人前に出る事を嫌い、   日々大奥に籠もって酒と色欲に耽り、将軍不適格との烙印を何度となく押されかける。   しかし大御所となって実権を握った吉宗の後ろ盾もあり、何とか将軍職には就任。   ひ弱で人見知りのダメ将軍・家重は、優秀な側用人・大岡忠光の助けもあってか、それなりに良きまつりごとを務めたという。   その最大の功績は、極めて有能な役人である田沼意次の才に目をつけ、これを側用人に取り立てて重用したということである。   かくして無能な暗君と家臣に蔑まれても、家重の治世は大岡や田沼らの助力で比較的平穏に過ぎていった。   最近の研究では家重の政治能力を再評価する声もあり、これまでの『 バカ殿 』イメージは徐々に払拭されてきている。   …史実上の徳川家重像は上に挙げた通り。では、聖板戦争に参加するサーヴァントの家重とはいったいいかなる人物か。   一言で言うならば、実在の家重との最大の違いは『 女性 』だった…というところ。これは近年実際に登場した女性説を反映させたものである。   ゆえに、史実で語られるバカ殿を、そのまま女性化したキャラだと思ってくれてさしつかえない。   ひたすらアホではあるが、そこそこ可愛げがあるのであまり嫌われない。むしろマスターや仲間の癒しになっている部分もある。   実は彼の父、吉宗は第一次聖板戦争に(他製作者さんの手により)参戦している。家重はその時の父の活躍を知っており、英霊の座にて   自分も聖板戦争に参加するのを心待ちにしていた。なので今回召喚された事がとても嬉しく、子供のように無邪気にはしゃいでいる。   さして複雑な人格でも無い見たまんまのキャラクターであるので、あまり語ることもない。   精神コマンド脱力の貴重な持ち主でもある。 ・方針(聖板戦争での立ち回り方) 序盤、縁あって彼女を召喚したマスターの藤は、その脳天気ぶりとアホっぷりに圧倒され軽く絶望に打ちのめされる。   家重は全員を倒して聖板を取得してやる…と息巻くも、一人では食事もトイレも行けないようなこのサーヴァント。   マスターなのにまるで保護者同然の状態で、どう考えても足手まといな家重を何度も見捨てようとしたが…できなかった。   早々に聖板の取得を諦めたマスターであるが、彼は第四次聖板を取り仕切る魔術組織・霊長総軍に所属するエージェント。   組織の上層部からの指示により、   ・戦闘スタイル(強み・弱点含む) 基礎ステータスは低いが、高い攻撃力を持つ宝具・征夷大将軍を所持しているので、トドメの一発を打ち込む役に適している。   隠密御庭番衆の宝具は用途が広いが決定打に乏しく、戦闘ではそこそこの援護にとどまるので過度に期待はできない。   よって、かく乱や牽制・囮役の得意なマスターを前衛に配置、相手を存分に翻弄したのち生じた隙を突く。そのような戦い方になると思われる。   しかしマスター一人を矢面に立たせるのにも限界があり、かといって家重自身は近接戦闘能力はほぼ皆無。耐久力も皆無である。   家重をやられたら終わり、なのである。   しかしそれはあくまでマスターとサーヴァント、二人だけならの話。仲間を手に入れ、家重をガードできるものが多くいれば、   彼女の一発技を決める好機は大いに増えることだろう。一にも二にも、まずは仲間(という名の弾よけ)探しが肝要である。 ・戦闘時相性の悪い相手・良い相手   とにかく家重の放つ宝具の一撃が決まるかどうかにかかっている。つまり挑発に引っかかりやすく誘導しやすい者、   目の前の敵しか見えない者、女子供には手を出さない者、機動力が低い者…などは家重への攻撃を防ぐのが楽であり、   組し易い相手と言えるだろう。   反対に小回りの効く敏捷な相手や複数の相手、攻撃範囲の広い相手とはあまり相性が良いとはいえない。   マスターである藤のかく乱が通じず、耐久力の低い家重を狙い撃ちされる恐れがあるからである。   全体を見渡して瞬時に戦況把握ができるような、軍師的な相手もやりにくいだろう。   ・性格的に相性の悪い相手・よい相手   度が過ぎたアホなので、当然それをある程度許容できる器量の大きい人物でなければつきあうのは難しい。   世話好きや親切心のある相手、母性や父性が強く保護欲を持つ相手…なども家重と相性は良いだろう。   知能や学識が高い相手からは総じてバカにされるので、どちらかと言えば相性は悪い。   また、徳川家・将軍家に対して遺恨など因縁のある相手とは非常に相性が良くない。   豊臣家の家臣、弾圧されたキリシタン、幕末の維新志士、前回登場した千子村正などとも相性は悪いだろう。   逆に鎌倉〜江戸の武士には征夷大将軍の位もあり、かなり強いカリスマを発揮できる。   まあ、それも相手によりけり…ではあるが。  ・マスターとの関係   マスターの藤八水は根来忍者の末裔であり、その先祖は徳川将軍家の江戸城御庭番。   すなわち、家重は先祖が仕えた主君。このあたりが縁となって、サーヴァントとして家重が召喚されたと思われる。   そんな経緯もあってサーヴァントとマスターでありながら、二人は主従関係という形に収まってしまった。   が、実際のところは家重の甘えん坊スキルが遺憾なく発揮され、殆ど八水は保護者同然に扱われているのである。   生前の家重は側用人の大岡忠光を常に傍らに置き、彼に身の回りの世話をさせていた。お陰で一人では何にもできず、   食事をするのもトイレをするのも、風呂に入るのも他人の手を借りる必要がある。   …当然、大岡は現代にいないので、そのお鉢はマスター藤に回ってくるのであった。  「八水〜!あーーーん。パクッモグモグウマー 」「なんでこないなことしてんねやろボク…あ、上様またニンジン残してはる!」 ・チームの仲間たちとの関係  ★目取真重雄 ⇒ ひと目見て、目取真の珍妙な姿に転げまわって大笑い。光るおでこが気に入ったらしく、          よく杓でピタピタ叩いたりマジックペンで落書きしたりしている。          家重をアホ扱いせず、将軍だと敬意を持って接してくれるので、大変気分が良い。          そんなクソ真面目な目取真をからかって遊ぶのも、なかなか楽しいらしい。  ★小田吉法子 ⇒ 法子は歴史好きなので家重が暗君であったのを知っており、初対面では無礼にも蔑まれる。          さらには徳川ではなく織田が天下を取るべきだった、などと平気で口にするので、いきなり大喧嘩。          …と、最初はそのようにぶつかりあったものの、マスター八水の取り成しもあり徐々に仲良くなってゆく。          終盤になると、まるで姉妹のような仲の良さを披露するのだった。  ★藤八水   ⇒ マスター。上記参照。  ★タイダー  ⇒ 何やら家重の琴線に触れた部分があったのか、初見でその姿のかっこよさに大興奮。          チームでほぼ唯一、彼をスーパーヒーローと褒め称える。そんな彼女の無邪気な眼差しに応えねばと、          逆にタイダーのプレッシャーとなっている(笑)時空戦士タイダーは、子供達の味方なのだ。          たまに家重はディオゲネスに乗って杓を振り回し、タイダーごっこをしながら悪人役の目取真を成敗して遊んでいる。  ★ディオゲネス ⇒ タイプは異なるがアホ同士、とても仲が良い。普段の遊び相手でもあり、よく犬のディオゲネスの背にまたがって           お馬さんごっこをしている姿が見られる。相手が高名な哲学者だとはつゆ知らず、お手やチンチンなどの芸を仕込む。  ★織田教長  ⇒ 日ノ本武士の頂点に立つ将軍の家重。片や教長は人知れず歴史の片隅に埋もれた武将。          おまけに徳川家は、織田家や豊臣家が築いた地盤を横からさらって天下をかすめとった…というようなイメージが教長にはあった。          こんなアホ(しかも女子)が天下に号令を…と憤懣やる方ない教長は、妬みからついつい家重に厳しくあたってしまう。          だが、彼女もまた自分と同じく政治に翻弄された人生を送ったと知り同情。一転して面倒見がよくなり、かわいがるように。  ★アニー   ⇒ かわいいものが大好きなアニー、出会ってすぐに家重を抱きかかえて頬をスリスリ。以後はまるで母親のように接してくれる。          お陰で家重もすっかり甘えん坊モード発動、あにー、あにーと慕ってくっついている。          八水や目取真にイタズラをしかけてからかい、怒られればアニーの後ろに隠れてやり過ごすのが毎度のパターン。 ・クロスオーバー的関係   ■真田昌幸 ⇒ 徳川家とは因縁のある相手。関ヶ原や大阪夏の陣では真田の活躍により、家康や秀忠はさんざん煮え湯を飲まされた。          当然、豊臣方の武将である真田側も怨敵である徳川家を快く思ってはいないだろう。          家重のアホっぷりに拍子抜けし、「…うむ、何やら気勢を殺がれてしまったわ」とか言って許してくれるのを祈る。 ■上杉謙信 ⇒ 同じく近年になって女性説が持ち上がった武将。なんとなく親近感を感じてしまう。 ■岡田以蔵 ⇒ 人斬り以蔵は尊皇攘夷派志士、佐幕派要人も暗殺している。家重も会ったら斬られそう。   ・聖板にかける願望   戦争を勝ち抜き、聖板を手に入れる事自体がとてもかっこいい事だと思っている…ので願望というほどのものはなく、   願いは手に入れてから考えようと思っている。もし第一次聖板戦争に参戦していた父・吉宗が聖板を未入手であった場合は、   父子二代に渡っての悲願…と言えなくもない。が、基本は仲間と楽しくやれればよいので、戦ってる内に聖板の事などどうでもよくなってゆく(笑 ・セリフ 『 ただみつー!ただみつはどこなのら〜!おしっこ〜! うえーーーーん!!』  『 ちちうえにきいたことあるのら。せいいた、せんそうというのであろ。よしよし、いえしげがみんなやっつけてやるのら 』  『 八水は、おにわばんなのであろ? ならば、しょーぐんのてとなりあしとなり、せわをせよ 』  『 ぬっふっふ。ぢつわ、いえしげは八水よりおねいさんなのらよ。なやみごとのそうだんなら、きくのら〜 』  『 ホントは普通にしゃべれたりして。えへっ 』 『 余は…大和武士の長、徳川幕府九代将軍家重である…お前のような下郎に…負けはせぬ。この、三つ葉葵に賭けて!    東照大権現、そして父上っ! 家重の戦いを、とくとご照覧あれ! 』  『 八水…いえしげは、がんばったのら。あたま、なでなでしてほしいのら…。 』 ・イラスト・小説などの二次創作使用の可否   かまいません。 ・ストーリー 【真説!本当の家重?】   家重が未だ幼い頃。御三家の一つ、紀州徳川家の五代目である徳川吉宗は、転がり込んできた天運に喜びを隠せなかった。   江戸幕府第七代将軍・徳川家継が僅か八歳で逝去、その跡目を巡る争いの中で、自分の名前が浮上したのである。   本来、徳川宗家に最も血が近く、紀州より格上であった尾張徳川家の徳川継友こそが八代将軍に相応しいとされていた。   ところが継友の背後には先代・先々代将軍の側で長年権勢を思うがままにした、側用人の間部詮房や学者の新井白石、家継生母の月光院らがついていたのが問題となる。   彼らの専横を快く思わなかったのが当時の大奥最高権力者、六代将軍家宣の正妻・御台所の天英院。   幕閣に女帝と畏怖され、女でありながら政治にも大きな影響力を持つ彼女は、継友を推す間部一派を追い落とすべく   対抗馬を探していた。そこで白羽の矢が立ったのが身体強健にして頭脳明晰、豪胆無比と名高かった紀州藩主の吉宗である。      さる時、天英院は大奥を秘密裏に抜け出し、とある寺で吉宗と密会し今後の事についての打ち合わせを行った。   「お久しゅう御座いますわ、吉宗どの。相変わらずのますらおぶり。まこと次代将軍に相応しきはそなたしかおりませぬ」   「これは天英院様…あなた様にそこまでお目をかけていただけるとは、この吉宗幸甚の至りでござる」   「然れど―――間部らは継友が三代家光公のひ孫である事を盾に、朝廷の支持も取りつけて将軍にしようとしています。    このままでは、またあの成り上がり者らが我が物顔で幕政を私する事になりましょう。それだけは避けたい」   側用人の間部詮房は元は猿楽師、新井白石は元は浪人同然の学者、間部と愛人関係の噂もある月光院は先代将軍の母だが元は寺の坊主の娘。   六代将軍家宣の正妻であり、後水尾天皇の孫にして五摂家筆頭近衛家の名門に生まれた貴種・天英院には、   彼ら下賤の者達が増長してゆくのは耐え難いことだった…。   「現状、将軍継嗣の趨勢はややあちら側に分があると言えましょう。このままでは次代将軍は継友になるやもしれませぬ。」   「すべては、この吉宗が力不足。天英院様には、顔向けもできぬ有様にてございます」   「…まだ、望みはあります。継友には弱みがある。かの者には子がおらぬ。良き後継ぎがいる…それは次の九代を決める折、    争いなく継嗣が済むということ。これは大切な事です。なれど吉宗どの、そなたには男子がおりゃる。長福丸と小次郎がの」   「――――はっ。確かに…おります。そこを突けば、我らの勝ちも、ありましょう…な」   「ええ、その通りです。…いかがしました? 何やら顔色が優れぬようですが」     天英院との密談から数日後。吉宗は江戸藩邸にて、長男の長福丸に会っていた。   長福丸はこの時、四歳。いまだ年端もいかぬ幼き子供である。   「…これ、長福丸。今日この父が会いに参ったは、そちの顔が見たいがゆえ。近うよれ」   「でんでけでんでんーでれでんでんー」   「なんじゃそのけったいな踊りは。よいから近う、近うよれ」   「猿楽の舞なのら〜。ちちうえにみせるのら〜。でんでけでんのーでーん」   「いいから、さっさと参れェ! そして鼻水を拭け!」   「にえ〜おこられた〜。あいあい〜」   鼻を垂らしてヘラヘラ笑う我が子の痴態を前に、こめかみを押さえて蹲る吉宗。天下に類なき麒麟児と呼ばれた彼も、   この子、長福丸の存在だけは悩みの種であった。何故ならば長福丸は体も弱く、オツムもあまり良くない。   その上、極めつけには…   「福は、おんにゃのこなのら〜!でも、ないしょなのら〜!」   「かように大声で申すな!! つーか知っとるわ!!」   そう、実は長福丸とは世を偽る仮の姿。彼は、いや彼女の真の名前は福姫。世に知られた性とは逆の、女子だったのである。   「ううむ…。いずれこのような日が来るのを予想し、将軍家跡目争いに紀州家が有利となるよう、    女子であるそちを男と偽って育ててきたは良いが…。」   女である事を隠すため、人前に出さず内々に育てたのが不味かった。すっかり甘えん坊で虚弱、おまけにこれこの通りのアホっぷり。   まだ長福丸こと福姫は四歳であり、今後の成長に期待したいところではあるが…。   「えへへ〜えへらへら〜」   「…さて、どうしたものやらのう」    今年になって生まれた弟の小次郎(後の田安宗武)を長福丸の代わりに後継ぎにする事も考えた。しかし、長子相続は徳川将軍家の御法。   表向き長男とされている長福丸を差し置き、次男の宗武を後継ぎにする事はできないのだ。   吉宗は二十八歳になるまで、子供ができなかった。十代半ばから妻や側室を娶って子作りを試みたというのに、自分には子種が無いのだと思わざるをえなかった。   だから、福姫が生まれた時はこれが唯一最後の子ではないかと考え、武家には男子が必要だと、その性別を偽らせたのである。   …もう少し待てば、その数年後に男子の小次郎が生まれるのだから、下手な小細工などするべきではなかったのか。   ここは表向き病死した事にして小次郎に継がせ、長福丸は女に戻して尼寺にでも送るか。はたまた離れに囲って秘密裏に育てるか。   『 ううぬ、あの事さえなければ―――――。』   長福丸の母である須磨の方は三年前に病死した。同じ一族の女ならば子づくりの相性良く、吉宗との間に再び子を成せるのではないか…そう考えた家臣達は、   須磨の方の従姉妹にあたる、お古牟という女性を新たに吉宗の側室として推挙。かなりの醜女ではあったが、男子さえ産んでくれれば良い…と娶わせた。   果たしてその二年後、古牟は見事に男子・小次郎を出産…しかし、である。。   吉宗は小次郎の出生に疑念を抱いていた。彼を生んだ母、古牟と同衾した日と出産の時期を計算すると、どうにもズレがあるのである。   『 小次郎はおそらく…わしの子では、ない 』 古牟は繊細な女であった。自らがひどい醜女であるのを気にしており、自分の存在価値はただ子を産む事だけであると言っては、言が過ぎると窘められていた。   やがて周囲の重圧に耐え切れず、古牟は静かに狂ってゆく。そんな女を抱いて心安らぐ訳も無く、彼女との床入りも徐々に少なくなっていった。   そんな中、急に彼女が懐妊。果たして生まれた子は、待望の男子だった…。   私は見事に責を果たしました――――そういって笑った古牟の顔を見た吉宗はゾッとした。その笑顔には、狂気と妄執が満ち満ちていたから。   それだけといえば、それだけである。日付が少々合わないこと、そして古牟のあの笑顔。それだけではあるが…吉宗には確信めいたものがあった。   小次郎は自分の子ではない。長福丸には感じる父子の縁のような繋がりが、どうにも感じられないのである。   『 なぜ死んだ、お須磨。わしはこの世でただ一人、お前だけを愛しておった。愛しておったからこそ子が成せたのじゃ。     お前以外の女とは、わしは子は成せぬ…! 』   見れば目の前の我が子、長福丸…いや福姫にはその母親である最愛の女、須磨の面影がある(鼻水は垂らしてなかったけど)。   たとえアホだろうと、クルクルパーであろうと、吉宗はこの駄目な子が可愛かった。心から可愛かった。   小次郎には感じぬ愛情が、そのアホ面を見ているだけで果てしなく胸の内より湧き出でてくるのだった。   「ちちうえ、ないてるのら。なぐさめてあげるのらよ。よしよし」   「…う、う、う、うおおおおおお!!! 福ぅぅぅぅ〜〜〜!!!!」   「どしたのら…ってにょええええええ〜〜〜〜!!」   堪えきれず愛しい我が子をかき抱き、溢れる気持ちを激しくぶつける吉宗。その嵐のごとき愛情にさらされ、   幼い長福丸は荒波に揉まれる小船のように上下前後左右に振り回される。   「あ、あばれんぼう!!! あばれんぼうなのら〜!!!!!!」 「好きじゃァァァァァ!!!! 大好きじゃァァァァァァァ!!!!!! せ、成敗ィィィィ!!!!」   火事場の屋根で火消しが掲げる纏のように、あるいは泣く子をあやすデンデン太鼓のように、長福丸を高々と振り回しながら、   吉宗は心の内で密かにこう、誓った…。   『 わしの後を継ぐは、この福ぞ。わしとお須磨の子、この長福丸こそが九代将軍になるのじゃ。小次郎には継がせぬぞ。     女だからなんだ。少々頭が足りぬからなんだというのだ。父は、お前を日陰者として生かしはせぬからな! 』   深き決意の光をその目に漲らせ、とめどなく流れる涙を拭った吉宗は、獣のように一吠えすると抱きかかえた我が子に   熱い接吻をお見舞いする。聞くところによれば、南蛮では愛する者にこうして親愛の情を表現するらしい。   「むぎゃぁぁぁああああああ〜〜〜〜〜!!!!!」   「…そこまで嫌がらんでも」      ――――それから数日の後。天英院の尽力により、徳川吉宗は八代将軍の座に着いた。   敗れた間部らは失脚し、名君吉宗の治世が始まるのである。   やがて長福丸は元服し名を家重と改め、後に九代将軍として父の後を継いだ。  -------------------《以下、おまけ》----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 《製作秘話》  2008年に『 九代将軍は女だった!(古川愛哲・著)』という本が出版されました。  その中で家重女性説が取り上げられてまして、まあ信憑性は低いトンデモ説の類なんですけどね。  ぶっちゃけていうとそれはありえんだろうと。でも漫画の『 大奥 』読んだ影響もありまして、こんなキャラを作ってみました。  それから製作者の国巣にとって家重といえば、1995年放映のNHK大河ドラマ『 八代将軍吉宗 』に登場する家重のイメージがあります。  演じているのは歌舞伎役者・中村梅雀。彼のバカ殿演技が強烈で、当時かなり話題になったと記憶しています。  今回作成したサーヴァント・家重のキャラクターにも、大きく影響を与えているモデルの一人です。  外見のモデルは某ソシャゲに登場し、声優・丹下桜の舌足らずな喋りで有名になったキャラ、クロエ=ルメール  …だったのですが、大分原型と違ってしまいました。ここまでアホな外見にするつもりはなかったんだが…。  これでは忍たまのしんべえか、クレしんのボーちゃんではないか…。 そういえば、家重はムシブギョーにメインキャラで出てましたね   《裏設定》  実際は妙齢の女性であるにも関わらず、幼い外見を利用し、過度にアホのフリをしてイケメンに甘えまくり。  お風呂で体を洗ってもらったり、トイレの世話までさせて密かに興奮している真性のド変態女である…。  側用人である大岡(もちろんイケメン)は気づいているが、そういうプレイだと割り切ってつきあっている。  また御庭番のイケメン忍者達にも、色々世話をさせていました。色々。  それでいいのか将軍! ひどいキャラクターだよほんとに。