「無理かもしれない。 
 難しいことだってのはわかってる。
  ―――それでも、俺にだってやれることはあるはずだ」





―――耳鳴りがした。
郵便受けの中身は先ほどと同じ。
ガスや水道、電気の開通手続きを促す手紙。

―――それに混じって、
日常〈ここ〉にあってはならぬ筈の異物があった。

震えがちに手を伸ばす。
見慣れた『それ』は、まるで吸い付くように手へと馴染んだ。

その実感で、疑念が確信へと変わる。
凍りついていた時間が、再びゆるやかに動き出す。

聖板戦争。今再び、その闘争が幕を開けようとしていた―――。







■人物像


焔条 陽介(えんじょう・ようすけ)

一人称:俺(僕) 二人称:君、あなた、〜さん

< 人物 >

赤みがかかった茶髪と右頬の火傷が特徴的な少年。
かつては髪を長く伸ばして右頬の火傷を隠していたが、ある『出会い』をきっかけにありのままの姿を見せるようになった。

性格は、第三次聖板戦争の頃と同じく悲観的だがお人好し。現在ではそこに前向きさと積極性が加わった。
これにより、自分には不可能と思えるような問題に直面しても決して立ち止まらない『強さ』を手に入れた。
これは、自身が最弱であると自覚しながら、それでもできることを模索して最善を尽くしたあるサーヴァントから学んだことである。

幼いころに受けた誹謗中傷から長らく人間不信に陥っていたが、第三次聖板戦争での数々の出会いを糧にこれを克服。
お人好しな性格や、人当たりの良さが正しく伝わるようになったためか、積極的に他者と関わりを持てるようになった。
また、孤立していた時期が長かった反動か、友達に対する思いは人一倍強い。
そのため、親しい人が絡むと無理をしてしまうこともしばしばである。

表に出す事こそないが、胸のうちに炎焼衝動という厄介な嗜好性を抱えている。
見境なしに発動するものでもないが、好意や感動といった強い感情に比例して、その衝動も増していく。
隣人へと向ける屈託のない笑顔の中に人知れぬ激情を抱え、それでも平然と日常と非日常を行き来する彼こそ本当の危険人物と言えるかもしれない。



< 四次世界へと辿り着いた経緯 >

第三次聖板戦争終盤、命を捨てて自分を逃してくれたキャスター(ファヴニール)との別れを経て、陽介は単身エルネストと対峙する。
天射浄化のために魔力を温存しているとはいえ、相手の繰り出す攻撃は陽介にとって最悪の相性であった。
それでも少しずつ距離を詰めていく陽介に対して、止めの一撃を放つエルネスト。
しかし、土壇場で陽介は『焔憑き』を発現。ファヴニールを模した炎を纒って水流の槍をこじ開け、一閃。
浄化発動のために気を向けた一瞬の隙をついて、焔条陽介は『博愛主義のテロリスト』との因縁に終止符を打ったのであった。

別れた相棒とサーヴァントの無事を確認して一息つく陽介だったが、そのとき天射浄化のために蓄えた魔力が何らかの意志に呼応して暴走。
展開していた焔憑きがファヴニールと誤認されたのか、そのまま英雄の座へと転移される。
座へと転移後、即時異物と判断されて強制送還される陽介。

しばらくして、陽介は高台で目を覚ます。その眼下には、見たこともない町並みが広がっていた・・・。



< 参戦の経緯 >

石枝市を散策して陽介が掴んだ情報は二つ。
一つは、どうやらここが自分のよく知る世界とは違う別の世界であるということ。
もう一つは町全体に不穏な空気が漂っていること。

殺人鬼が夜な夜な徘徊しているという噂、学生たちに広まりつつある薬物の噂、闇の底で大人たちが蠢く気配。
急速な治安の悪化に、つい先程まで経験していた死地を思い返していた陽介は、ある光景を目撃する。
人通りも途絶えた帰り道、一人の学生を後ろから尾行する学生の姿。

果たしてその予感は的中した。
目の前で展開された魔力の気配は紛れも無く魔術のそれだった。
こんな往来で魔術を使用したことに驚きつつも陽介は襲撃者と対峙する。
不意打ち気味に割って入ったことも功を奏し、陽介は難なく襲撃者を取り押さえることに成功した。
その瞬間、

「貴様ァ、何をやっとるかァ!」


突然浴びせかけられた恫喝。避ける間もなく繰り出された正拳突き。
むせ返って滲む視界の向こうには、一目散に逃げ出す襲撃犯の姿。

「どこを見ている!こっちを、見んか貴様ァ!」

そしてなおエスカレートする無茶な要求。
振り返ると、ジャージに身を包んだ筋骨隆々の男が仁王立ちしていた。
男の名前は『広岡 勇造』。石枝高校に在職中の教師だった。
見回り中に罪もない(ように見えた)名門校『煌星』の生徒を組み伏している様を見て、陽介を不良と勘違いしたようだ。
必死に弁明するも、「言い訳するんじゃない!」と話を聞いてもらえない。

ところが、身寄りがなく、住むところもないという境遇を知ったことで態度が一変。
号泣しながら頭をワシャワシャされ、「辛かったな・・・本当によく頑張ったな」と連呼されながら、ひたすらラーメンを奢られる始末。

―――そうして、焔条陽介の石枝高校編入が決まった。深夜の会合からわずか12時間後の出来事である。

その後、『先生』から元石枝高校の寮として使われていた格安の古アパートを紹介され、陽介の新生活が始まった。

そんな折、陽介のもとに『あるもの』が届く。
小聖板―――それが意味するものが何であるか、焔条陽介は身を持って知っていた。



■戦闘スタイルと聖板戦争における方針


 <方針・目的>
自分から積極的に戦闘を仕掛けることはしないが、周囲に害をなそうとする存在には容赦はしない。
また、自身の身内の命がかかっている場合も、積極的に戦闘へと介入する。
できるだけ多くの人を助けることで、この世界の尊い部分を自身のサーヴァントに知ってもらいたい、と考えているようだ。
また、自身のために他者を傷つける気にはなれないが、元の世界に帰るためにも「生き残る」ではなく「勝ち残る」ことを目標としている。


 <戦闘に関して>
自分から戦いを挑む気はないが、戦闘自体に対しては抵抗を感じていないようだ。
マスターの命は出来る限り奪いたくないと考えているようだが、相手が救いようのない悪だと判断した場合、
あるいはそうしないと止められないと判断した場合は、自らの手を汚すことも辞さない。

全般的には、持ち前の繊細さを生かした状況把握と、師とも言える者から譲り受けた大胆さを併せ持って行動することが可能。


 <性格的相性に関して>
きちんと意見を求めてくれる相手や、グイグイ引っ張ってくれる相手は誰かさんを思い出すためか非常に相性が良い。
ただし、以前と違い積極性を身につけているので、状況に応じてではあるが誰かをリードすることも可能である。
広い範囲の性格の人間と付き合えるが、自身のために他者を平気で傷つけられる人間や、純粋に『悪』を体現するような人物だけは
許容することができない。



■サーヴァントとの関係


瞳の奥の闇からかつての自分と似た空気を感じつつも、その闇が自分よりも深いことは薄々察している。
また、彼が自分自身を何より憎んでおり、その願いが自身の誕生の抹消ということも知っており、
その願いの結果世界が変容しかねないという事にも気がついている。
それならせめて自身が去った後の今の世界を愛してほしいと考えており、日々気を回しているもののなかなかうまくいっていない。
しかし、炎に対する憧憬や、本能的に『悪』を嫌っている点、責任を他者に求めない生真面目さなど、共通する部分も多く、
性格的相性は悪くない。
彼の願いを叶える以外の方法で彼を救い、自身と契約してくれた恩を返したいと考えている。



■台詞


「少なくとも俺は―――、自分の大好きな人達が笑ってくれたら、それだけで幸せになれるよ」


「さぁ、行こうか―――、アヴェンジャー」


「俺は英雄なんかじゃないよ。だって俺は―――、一人じゃ立ち上がろうとすら思わなかった。」



■イラスト、小説の二次創作使用


ご自由にどうぞ。